
【ストリートアート】フィレンツェの街角から
1月も終わりに近づき、冬らしい寒さが続く今日この頃。冬は雨や曇りが多いフィレンツェですが、たまに冬の晴天を見ると寒くても、散歩がしたくなる。
フィレンツェに住み始めて7年目。旧市街を毎日歩いているけれど、毎日、新しい発見がある。
フィレンツェの旧市街は、中世の面影が残る建物や通り
で溢れている。通りを抜けるとルネサンスの代表建築
サンタ・マリア・デル・フィオーレやジョット塔の鐘楼が顔をだす。フィレンツェは、街全体が美術館のような場所だ。
そんな街中にぽつんぽつんとある道路標識。よくよく道路標識を見るとクスッと思わず笑ってしまう。
なぜかって道路標識にステッカーが貼り足されているから。そんな見るとほっこり笑ってしまう道路標識が、フィレンツェの街に溢れている。道路標識も芸術の街・フィレンツェならでは。
フィレンツェといえば、キャンティーの赤ワイン。こんなところにも赤ワインをモチーフにした道路標識。
サンタ・マリア・デル・フィオー大聖堂のクーポラを建設したフィリッポ・ブルネレスキが造った円形の建築。
その側には、日本人にお馴染みのお相撲さんのステッカーが貼られた道路標識。思わず写真をパチリ。
今までその道路標識を見つけるたびに笑っていたけれど、誰が何の目的でそのステッカーを作ったのか考えたことがなかった。
そのステッカーの作者は、クレット・エイブラム(Clet・Abraham)。フランス出身のアーティストで、2005年からフィレンツェ在住。
最初は絵描きとしてスタートした。その後、思い切った斬新なアイディアで、ステッカーを道路標識に貼り付けるという「ステッカーアート」を始めた。
クレットのアートは、文化的差異や反戦などをテーマにしている。
クレットのステッカーアートは、最初はフィレンツェとその周辺の街でしか見かることが出来なかった。今では、ミラノ、ローマ、パリなどヨーロッパの主要な街で見ることが出来きる。
今までにアメリカ、香港、日本でステッカーアートを行った。
当初クレットのステッカーアートは、当局から公共物の破壊行為として、しばしば取り締まりを受けた。だけど彼のステッカーアートの合法性を主張する討論で一躍有名になった。
クレットのステッカーアートの評価は、真っ二つに分かれている。ある人は、クレットのステッカーアートを公共物の破壊行為だと考える。一方、ある人は、クレットのステッカーアートは、道路標識にクレットの社会への皮肉が表現されていると評価する。
今までにクレットのステッカーアートは、道路標識としての機能を損なっていないことに注目する。
道路標識がある「道」は、全ての人に開かれた「場所」だ。その場所では、全ての人が自由に表現する権利がある。
クレットのステッカーアートは、ストリートアートとは「何か」「芸術とは何か」を考えさせてくれる。
クレットのステッカーを見るだけでなく、購入することも出来る。
フィレンツェにある唯一のクレットのお店兼工房は、フィレンツェの街を一望できるミケランジェロ広場の近くにある。
クレットのお店のドア前には、いつも中を興味津々に覗く人で溢れている。
クレットの工房兼お店では、ステッカー、トランプカード、ワッペン、缶バッチなどが販売されている。
工房の様子。ここで数々のステッカーアートが生み出されている。
クレットの工房兼お店では、街で見かけたステッカーはもちろん、運がよければ作者・クレットの作業の様子が見られるかもしれない。